国際アルツハイマー病協会は、世界100か国の加盟団体からなる認知症に関する国際組織です。今回、マレーシアのクアラルンプールで開催されたアジア太平洋地域会議に、公益社団法人認知症の人と家族の会(国際アルツハイマー病協会加盟団体)理事で本学老年看護学准教授原等子先生と本学学生2名(4年生古高瑞穂さん、3年生大久保奏さん)が参加しました。
会議では、認知症に関する地域づくりや医学的な知見などの情報交換が行われました。この会議のプログラムのひとつであるYouth Engagement Programme(YEP)の中で、認知症の人と家族の会から日本の若者の認知症にかかわる取り組みを紹介する機会が設けられ、慶応大学チームの「旅のことば」プロジェクト、近畿大学チームの農福連携プロジェクトとともに本学学生が中心に活動している「認知症オレンジサークル」の取り組みを紹介することになりました。3日間の会議のうち、2日目はプレセッションとしてYEPワークショップ、3日目は本会議のシンポジウムでYEPの発表枠を得て、2回にわたり本学学生がシンポジストとして発表し、海外の参加者、国内からの参加チームメンバーとの情報交換をしました。会議終了後にはわずかな時間でしたが、マレーシアアルツハイマー協会が今取り組んでいるショッピングモール内のコミュニティスペースの見学もしてきました。認知症にかかわるさまざまな取り組みが国内外で実施されていることに刺激を受けてきました。
今回、マレーシアでの認知症アジア地域会議に参加して、現在はまだ認知症者数が少ない国々でも、認知症に大きな関心を抱いていることが衝撃的でした。日本は高齢化も進んでおり、認知症先進国だと思いますが、認知症の方の割合に対して世間の関心が薄く、認知症への関心を持っているのはごく一部の人に限られているように感じます。だからこそ、認知症啓発活動が急務であることを実感しました。
一方で、認知症の方が増えるほど、介護者として、認知症に関わる人口も急激に増えていくでしょう。それに従って、認知症サポーター養成講座で言われるような、「認知症の方とのかかわり方の超基本的姿勢」の知識だけではなく、より具体的なサポート、例えば認知症の方がリラックスしていられる社会的な活動の場の提供や、認知症の方へのより効果的な対応方法の知識を得られるメディア?機会の提供などの需要が高くなると思います。それらの支援を実現するためには、医療や福祉の分野だけの活動では限界があります。例えば農業や情報などといった、あらゆる分野からの参画が必要不可欠であると思います。
今回、他の日本チームの発表を聞いて、農業など、もともとは福祉にはあまり関わりのないようにみえる分野からでも、認知症に関連した活動ができることを知りました。「自分の専門分野は認知症に関係がない」と思っている人も多いと思いますが、分野ごとにそれぞれの特性を活かして認知症の支援を行うことで、認知症のご本人、ご家族などに対して、社会全体でより多面的なサポートをすることが可能になると思います。
様々な分野?職種がある中で、看護師?保健師などの看護職は、看護の対象を全人的な視点でとらえて、「その人らしさ」を保ったまま生活が送れるように必要な援助を行ったり、支援につなげたりすることができます。いち援助者としても、支援のコーディネーターとしても活躍できるからこそ、率先して認知症ケアに関わっていくことができる職種であると考えます。私は今後、看護師として認知症に関わっていくにあたり、まずはケア技術を身につけることで、認知症の方とそのご家族に安心していただける看護を実践できる援助者を目指したいです。その中で、認知症啓発活動も続けていきたいと思います。また、看護以外の分野における認知症支援に関してもっと広く知ることで、認知症支援を多面的に理解していきたいです。今回、認知症を通して、様々な分野でご活躍されている皆様と交流でき、自身の視野を大きく広げることができました。最後になりますが、この度の参加に多大なご支援をいただいた認知症家族の会、私たちの発表を全面的に応援していただいた原等子先生、英語のご指導をいただいたサイモン?エルダトン先生をはじめ、関係者の皆様に、心から感謝を申し上げます。
4年 古高 瑞穂
今回、8月16日から18日までマレーシアのクアラルンプールで開催された認知症国際アジア太平洋地域会議に参加しました。老年看護学領域の原等子准教授に参加のきっかけを作っていただき、認知症オレンジサークルの活動を国際学会という大きな舞台で発表をしてきました。発表に至るまでたくさんの方々にご協力いただき、無事に発表を終えることができました。発表のテーマはTargeted dementia awareness raising activities by nursing students(看護学生による認知症を対象とした啓発活動)で、竞彩足球app下载の認知症オレンジサークルとして行って認知症サポーター養成講座やボランティア活動の紹介を主として発表を行いました。私自身、学会や会議に参加した経験がないため、初めての学会が国際学会ということにとても緊張しました。看護学生が活動をする意義なども考え、竞彩足球app下载性を伝えるため、このテーマを選択しました。
マレーシアまでは空路でベトナム経由の旅程でした。往路は一緒に行った4年生の古高さんと2人で先生が一緒ではなかったので不安でしたが、無事にたどり着くことができました。会議は3日間行われ、自分の想像以上の規模の国際会議で発表前はとても緊張しましたが、無事に発表を終えることができました。たくさんの方から反響をいただきました。慣れない言語での発表は想像以上に大変でしたが、オレンジサークルとしての活動をたくさんの方に知っていただけてよかったです。また、各国の認知症に対する取り組みを知ることもできました。
今までは日本国内の活動しか知らなかったのですが、世界中で様々な人が認知症に対する取り組みをしているということを実感しました。1回目の発表が終わった後、現地のマレーシアの看護学生の方々に声をかけていただき、写真を一緒に撮りました。同じ看護学生として、少しの時間でしたが意見を交換し交流をすることができました。今回、国際会議に参加したことで多くの学びを得ました。会議そのものだけではなく、同じ日本チームの学生間の交流や普段お話しすることのない方々から学んだこともたくさんあります。自分はどのような看護職を目指すべきなのか、これからできることは何があるのか、今回の学びをどのように大学の仲間に共有すれば良いのかなど様々なことを考えました。マレーシアへの移動も含め6日間、とても貴重な時間を過ごすことができました。本当に様々な分野の人が、認知症の人とその家族、取り巻く環境をよりよくするために活動しているということを肌で感じることができました。会議に参加したということだけで終わらせるのではなく、認知症オレンジサークルとしての活動を継続していく中で、参加した経験を活かした内容の活動を盛り込みたいと考えています。
3年 大久保 奏
帰国後学長室にて(左から原准教授、参加学生2名、小泉学長)